
微妙にずれる!ピッチを合わせる練習をしよう
2022/07/20
ピッチとは音の高さのことです。
正しい音の高さで歌うことは、正しいメロディーを歌うことになります。
前の記事【歌ってみたを上手に歌うための練習、コツ】でも述べましたが、ピッチは歌った後でソフトを使って補正することが、最近の音楽制作では当たり前になりました。
でも、伸びる歌い手は日々ピッチを良くする練習もしています。
今回は、ピッチ練習が必要な理由と方法をご説明します。
ピッチ補正よりピッチを合わせる練習に時間をかけよう
ミキシングの段階でピッチを補正することが常になったこの頃ですが、アーティスト側のこだわりや音楽ジャンルによっては、補正を行わないこともあります。
正しいピッチであることが優れた音楽の条件とはいえないからです。
ピッチ補正すると不自然な音になったり、せっかくシンガーが歌った感情表現が台無しになったり、下手にいじると次の音とのバランスが崩れたりと弊害もあるため、補正しないナチュラルな声のまま仕上げられれば、それに越したことはありません。
でも、現在はその不自然さを活かしたサウンド作りもありますよね。
ちょっと「ケロケロ」した声色の歌を聞くことが多いのではないでしょうか?(いわゆるケロケロボイスやロボ音)
わざと極端に正確なピッチにシフトすることで、ケロケロした電子音みたいなエフェクトを得ています。
世界中のポップス・シンガーが、ここ数年ケロっています(私は『ケロる』と表現しています)。
さて、そんなミックス師の腕の見せ所『ピッチ補正』ですがこれを読んでくださっている歌い手さんは 「機械の補正に頼るより、実力を磨くゾーーーっ!」 という情熱をお持ちの方が多いと思いますっ ←(希望^ ^)
声という楽器はギターなどの弦楽器と同じく、やや曖昧な音楽的なピッチが持ち味なんです。
そこを活かして自力でピッチを取ることが歌の良さにつながります。
なるべく機械的な補正をしないで、本来持っている歌声の良さを引き出すためにも、自分でピッチが取れるように練習をしましょう。
何より!Vtuberさんの「歌ってみた」を聴いて素敵だなぁと思ったのにYouTubeでの生配信(いわゆる「歌枠」)で生の歌声を聞いたときに 「あれ?あまり上手くない…?」 と思われるのも悔しいですよね。
おススメの練習法の例
ここからは実際に練習するフレーズをいくつかご紹介します。
ピッチは声帯の伸縮でコントロールしますので、そのための筋肉を動かす筋トレが必要です。
そして、音の高低を聞き分ける耳のトレーニングも大切ですが、全部やると頭がパンクするので、今回は声帯周りの筋トレになるフレーズを3つご紹介します。
できれば、スマホのアプリでピアノなど鍵盤を弾けるように準備をして、音を確かめながら進めてくださいね。チューニングの確かなものが良いので、弦楽器は避けましょう。
アプリの鍵盤に音名が書いている場合はアルファベットだと思います。
C-D-E-F-G-A-B-C は
ド-レ-ミ-ファ-ソ-ラ-シ-ド です。
C4と書いてあれば、ピアノの鍵盤の真ん中のドのことです。
そこから歌い始めますよ。
高くて歌い辛い場合はオクターブ下のC3から歌い始めましょう。
今回はドからソの5つの音だけを使います。
ピッチ練習1
ド レ ミ ファ ソ ファ ミ レ ド
(C4かC3から口を閉じてハミングで歌いましょう)
これは登って降りるお馴染みのフレーズですよね。
でも、気合い入れてピッチを取らないと実は難しいのです。
ド レ ミ ファ ソ ファ ミ レ ド
黄色のファとミに注意してください。
登っていく時のファが高過ぎていませんか?降りてくる時のミが低過ぎていませんか?
なぜそうなりやすいかというと、他の音の間隔は全音なのに対し、太字のファは半音登るだけ、太字のミは半音下がるだけなんです。半音とは、全音の半分の音程差です。全音は10㎝移動するのに対し、半音は5㎝しか移動してはいけないんです。
階段の途中で段差が違っているようなものです。転びますよね。
知っているフレーズを歌う時、ついフレーズ単位でイメージしてサラッと歌ってしまいますが、ピッチ練習としてフレーズを歌うときは、 その音程(音と音の間隔の幅)に気をつけて練習してください。 音程が半音のところは特に注意して、鍵盤で1音1音弾きながら、その音と自分の声をしっかり合わせながらゆっくり歌いますよ。
何度もやってみましょう。耳のセンスも鍛えましょう。ピアノと声のピッチがピッタリ合うように歌えたら、アカペラ(ピアノ無し)で歌ってみます。録音して聴いてみてもいいですよ。
スマホがピアノで使用中でしたら、何か別の録音機能のあるデバイスをもう1つ用意できるといいですね。
地味な練習ですがコツコツ頑張りましょう!!
ちょっと大切な注意点
ピッチ練習の時は音程を意識して『音単位』でピッチを取ることに集中しますが、本番で曲を歌う時は『フレーズ単位』で取れるようになりましょう。メロディーを奏でるためのピッチ練習なので、歌う時はメロディーに気持ちを込めなければ本末転倒ですものね♪
ピッチ練習2
ド ミ ソ ミ ド ファ ド
(ラララで歌いましょう)
練習1と同じく、ピアノで音を確かめてしっかり音を合わせながら歌います。「ファ」の音が取りにくいですよね。ドからファに登る音程、覚えましょう。
ピアノと声のピッチがピッタリ合うように歌えたら、アカペラ(ピアノ無し)で歌ってみます。
ピッチ練習3
ド ミ ソ ミ ド
ド ミ♭ ソ ミ♭ ド
1行目のフレーズはピアノの白鍵だけですが2行目はミに♭(フラット)がついているので半音下がります。ミ♭は、白鍵のレとミの間の黒鍵です。何度も弾いて 聴いて覚えましょう。
この ド ミ♭ ソ ミ♭ ドのフレーズはマイナースケールという音の並びです。ちょっと悲しげな、暗いメロディーですよね。ピッチが取りにくいと思いますが、練習しておきましょう。
ド レ ミ♭ ファ ソ ファ ミ♭ レ ド もオススメです。
ご紹介したフレーズはほんの一部です。
様々なフレーズを、様々なキーで練習します。
録音したり、人に聞いてもらったり、正しくピッチが取れているか確認しながら進める地味な作業ですが、とても大切な練習です。
アスリートが素振りや、受け身や、ノックを受ける練習などをひたすら繰り返すのと同じだと思ってくださいね。
退屈な練習ですが、積み重ねが結果を生みますよ♡
まとめ
今回はピッチ(音の高さ)を取る練習が必要な理由と、少しですがその練習法をご説明しました。
現代の音楽制作では、ピッチ補正が機械的に可能で、それをエフェクトとして使ったサウンド作りもありますが、歌い手として長く色々な作品を歌っていくためには、 自力でピッチ良く歌えることがとても大切です。
声という楽器は、機械的に正確なピッチではなく、音楽的に曖い昧なピッチが持ち味の楽器だということも心に留めておきましょう。
そして、練習する時はメジャースケールだけではなく、マイナースケールも取り入れてくださいね。
さあ沢山練習を積んで表現力のある歌声を手に入れたら、自信を持ってレコーディングに臨みましょう。そして、音楽的なピッチを機械的なピッチに補正しようとするミックス師に 「おいおい、ナニ勝手にいじってくれちゃってんのよ」 と叱って差し上げましょう。