
本当に歌を上達させる!Mix師頼りのレコーディングはもう辞めよう
2022/07/23
歌い手が歌ったボーカルトラックを、カラオケ音源とミックスする工程を経て「歌ってみた」が仕上がっていきますよね。
このMIXの工程を担当するのがMIX師(ミックス師)です。
レコーディング・エンジニアとMIX師
音声、音楽の世界には、昔からレコーディング・エンジニアという職人がいます。
レコーディング(録音)のエンジニア(技術者)ですから、楽器や歌の録音に始まり、各トラックをミックスして音源を仕上げる職人達です。
それ以外にも、オーケストラの録音、合唱団の録音、バンドのアルバムのスタジオ録音、ライブ録音、鳥の声からエンジンの爆音まで、個々に得意分野はありますが、なんでも録音、整音、ミックスする技術を持っています。レコーディング・エンジニアは、レコード会社の録音部や、レコーディングスタジオ、フリーランス等で仕事をしています。マスタリング専任のマスタリング・エンジニアという職業もあります。
一方、デジタル世代では別の音楽制作の現場が育ってきました。多くの音楽ソフトができて、サンプリングされた音源やボカロが発展し、自宅のコンピューターでMIDIデータを駆使する新しいミュージック・クリエーター達が生まれ、彼ら、彼女らは現在の音楽産業を支える存在にもなっています。
そんな文化から生まれた「歌ってみた」の世界で活躍するのが、レコーディング・エンジニアではなく、MIX師なのです。
作詞作曲、カラオケ制作、ボカロもやるけど自分も歌うというマルチなMIX師もいます。
どうせなら一歩先を行く歌い手を目指そう!
そんなMIX師達は、見事な手さばきで歌ってみたを仕上げてくれます。
MIX師は
- 歌い手がもしも 『小さく元気のない声』 で歌っても、ミックスでしっかりした声にします。
- 歌い手がもしも 『超音痴さんでピッチがめちゃくちゃ』 でも、ミックスで正しいメロディーにします。
- 歌い手がもしも 『超走り屋さんでカラオケより2秒先を歌って』 いても、ミックスでタイミングを合わせます。
でもMIX師がそんな作業に時間を費やすより、 歌い手が生歌でカッコ良く歌うための練習に時間を費やすほうが何倍も楽しいし、歌ってみたの仕上がりが何倍も良くなります!
あっ、大丈夫です!
歌い手がどんなに上手に歌っても、MIX師の仕事は無くなりません!歌の輪郭を出したり、全体のレベルを揃えたり、ふっくらさせたり、リバーブかけたりと、他にやり甲斐のある仕事がドッサリあるのですから、ピッチやタイミングの修正は最小限で済むようにした方が絶対に良いですよね。それに、歌い手としても実力が上がりますし、自信を持って歌えます。 聴く人の心をつかむ歌い手を目指しましょう。
話題になる歌ってみたの歌い手の多くは、実力派ではありませんか?
これを読んでくださっている歌い手さん達の、実力アップの後押しが少しでもできればと願っています。
素敵な歌を沢山聴いて、センスを養い、そこに近づくための練習をどんどんしてくださいね。
場合によってはクリック無しで録ってよい(歌ったみたの作り方番外編)
歌ってみたといえばサウンドも制作プロセスも、とってもデジタルなイメージがありますが、中にはピアノやギター1本で、弾き語りのような音源を作る方もおられます。その場合、録音現場ではカラオケではなく、ギターやピアノの伴奏を録音しますよね。
そういう音源を作る歌い手は、普段はフリーなテンポで弾き語っています。
それを、録音だからといってクリック(メトロノーム)に合わせて演奏すると、その人の良さが大きく損なわれます。実際にそんな人を沢山見てきました。
「あれ? 普段はとてもいい演奏してるのに、録音ではどうしてこんなにガチガチなの?」と尋ねると 「録音だからクリックに合わせてと言われて、弾きにくかったけど頑張って合わせた」 という答えが返ってくるのです。
そんな場合は「クリックなしで録りたい」と言ってもいいと思いますよ。
録音する人も、クリックなしで仕事できるようになってください。弾き手に、一発録りでも録れる実力があることが条件ですが、 クリックなんてない方がいい音楽も沢山あるんです。 クリックがないことで、後で録る歌がどうしても合わせられないところがあったら、その部分に「手打ちクリック」を入れましょう。
生楽器ですから、切り貼り編集する必要もないので、クリックなしのフリーテンポでもいけること、結構ありますよ。
デジタルな世界に、ふと垣間見えるアナログ・サウンドが魅力的なこともありますよね。
歌い手さんも、MIX師さんも、臨機応変にチャレンジする気持ちを忘れずに進んでくださいね。