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無理して歌ってませんか?自分に合った曲の探し方

2022/07/17

歌ってみる曲を決める方法、あなたはどうしてますか?

「曲選び 難しい」と思っている方も多いですよね。
私も歌の生徒さんに「次回までに3曲は選んできてね」なんて、酷な宿題を出すことがあります。

実は歌い手にとって選曲はその良し悪しで運命が決まると言ってもいいほど重要なプロセスなんです。

「自分には自分に合う曲なんてわからない!」そう思う人の方が多いはず。
大丈夫!!歌い手さんが自分に合った曲を見つけるのは難しくて当たり前なんです。
その理由と、自分に合った曲の見つけ方を解説します。

この記事で解説する選曲のポイントは・・・

  • 声の高さが合っているか
  • 原キーはキツイが、変更すれば歌いやすいし、なんだか良い感じ
  • 曲調も歌いやすい
  • スマホなどで録音して客観的に聞いてもやっぱり良い感じ
  • 人に聞いてもらった評判も良い

声は世界にひとつの楽器

メロディーを奏でながら言葉も発する、声は歌う楽器です。
実際に、声の仕組みはアコースティック楽器と同じなんです。

アコースティック楽器の仕組みには、必ず振動体(原音を作るところ)と共鳴体(原音を響かせるところ)があります。

ギター

ギターの振動体は 『弦』 で、共鳴体は 『ボディー』 です。弦(振動体)を弾いて振動させ、サウンドホールの奥のボディー(共鳴体)で音を響かせて初めて『響きのいい音』が出来上がりますよね。

声の場合、振動体は 『声帯』 で、共鳴体は 『咽頭(イントウ)』 です。
ノドの大きな軟骨(のどぼとけ)の中に2本の弦のような形で「筋』が張られ、そこを息で振動させます。
そして生まれた原音が、次に向かう咽頭というスペース共鳴します。
咽頭はノドの奥から鼻の奥にかけてのスペースです。

咽頭で共鳴した音声が口から出て、初めて響きのいい声になります。
キャーー! 想像するの、難しいですよね。
振動体(声帯)と共鳴体(咽頭)があって、声はアコースティック楽器と同じ仕組みで鳴る楽器だということを軽くイメージしてくださいね。

ギターと声には違いもあります。
ギターは材質と大きさを揃えれば、ほぼ同じ楽器を複数作ることができますが、声はそうはいきません。各個体は生物で、大きさも形も違うからです。
選曲する時には、ここがとても大切なポイントになります。
自分(楽器)の特性を活かした選曲をするべきなんですよね。

「特性を活かすとは?」説明をします。

楽器は大きさで音域が決まる

楽器には色々な形、大きさのものがあり、それぞれ役割がありますよね。
よく似た3つの楽器を比べてみましょう。
楽器
形は同じで、弦も4本。違いは?はい! 大きさです。

バイオリンは小さな楽器で弦も細くて短いので高い音が出ます。
チェロはバイオリンより大きくて、弦も太くて長いですから低い音が出ます。
コントラバスはそのチェロよりさらに大きくて低い音です。

人間の声も同じです。

体が大きい人は声帯も大きくて低い声が得意なはずです。
赤ちゃんは体が小さいので声帯も小さく声も高いですよね。

そんな訳で、声という楽器の最大の個性はその音域です。

低い声が得意な人。
高い声が得意な人。

楽器の特性を活かして、歌いやすい高さの声が沢山使える曲を選ぶことが、まずは一番のポイントです。

そしてそれは、沢山の歌を歌ってみることでしか見つけることはできません。

なので、歌い手さんが自分に合った曲を見つけるのは難しくて当たり前なんです。

自分に合った曲の選び方

選び方① 歌いやすい曲を選ぶこと

でも、こう考えると、なんだか不自由を感じますよね。

「じゃあ自分は高い声が得意だから、低めの歌は選んじゃいけないの?」と思いますよね。

単刀直入にいうと、残念ながらそういうことなんです。

人は声帯の個性で音域がある程度決まるので、歌う曲を合わせるしかありません。

バイオリンでチェロのパートを弾こうとしても時間の無駄です。
それに、個々の声の特性は声の高さだけではありません。
音色にも個性があります。声の太い人、細い人。透明な人、歪みのある人。
この個性も最大限に活かせる曲を選ぶことが大切です。

選び方② キーの変更で歌いやすい高さに!

声の高さを合わせる方法として、キーを変更するという方法があります。カラオケでよくやるアレですね。キーを変えることで「急に歌いやすくなった」「あれ?これも有りなんじゃないかな?」と思えることがあります。

例えば、ド音からオクターブ上のド音までの音域の歌を歌ってみて、「なんだか良くないな」と思っても、半音上げ(#をつける)にするとド#音からオクターブ上のド#音までの音域になります。

このように半音上がっただけでもベラボーに歌いやすくなることもあるんです。

半音変わるだけでも大きな違いになりますが、曲がカッコ悪くならない範囲ならもっと大きく変えても構いません。

キーを変えることは妥協ではありません。あなたのセンスを活かせるアレンジなのです。

もちろんキーを変えても歌いにくい曲もあります。自分の良いところが全く出てこない曲です。曲調や、音色が合っていない状況ですね。

こういうのは、どんなに歌いたい曲でもとりあえず保留にして違う曲に行ってみましょう。とにかく歌っていて気持ちの良い曲、歌いやすい曲を選ぶと、その選曲はまず間違い無いですよ。

選び方③ 人に感想を求めるのもおススメ

何曲か練習して、ボイスメモなどを使って録音し、客観的に聴いたりしていると、なんとなく自分の『得意』が見えてきます。「アップテンポで元気な曲が合ってるな」とか「しっとりした曲が合ってるみたい」とか。

見えてきたら、まずはそこを自分の強みと決めて伸ばしていくと良いですね。
そして、時には他の人に聞いてもらうのも、独りよがりにならなくておススメです。

歌に詳しい人じゃなくても良いですよ。
意外な意見が聞けて、そこから新たな方向性が開けることもあります。

キーが変わると気持ち悪くて歌いにくい!

「原曲をいつも聞いているので、キーを変えるとなんだか気持ち悪くて歌えない」という人もいますよね。特に半音だけ上下するなど、微妙な変化に違和感を感じることも多いようです。

この場合は、思い切ってその曲は「合わない曲」に振り分けて、違う曲を選びましょう。

「イヤだ!この曲を歌いたいんだっ!!」という場合は、歌いやすいキーに変えて歌ったものや、カラオケ音源を聞いて聞いて聴きまくって、そのキーに慣れるしかありません。
歌いたい曲のためならどんな苦難も乗り越える勢いで、楽しく取り組んでいきましょう。

キーの変更なんてダメッ!!な音楽もある

音楽ジャンルによっては、キーを変えることでカッコ良さが激減するものもあります。
クラシックロックや、ハードロック、ヘビーメタルなど『ギターがメインの音楽』は、キーを上げると全体のサウンドが軽くなって台無しになります。

ファンクなどに多い、管楽器のパートもキーを変えるのは簡単ではありません。
そして、絶対にキーを変えてはいけないジャンルはクラシック音楽です。
声楽歌手はスコア通りのキーで歌えなくてはいけないので、生まれながらのフィジカルな条件にもある程度左右される過酷な世界です。

このように、キーを変えるべきではない音楽もあることを知っておきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

自分に合う曲の条件は、歌ってみて歌いやすいかどうかです。どんどん歌って試してみよう。

選曲のポイントは・・・

  • 声の高さが合っているか(自分の楽器のサイズに合っている)
  • 原キーはキツイが、変更すれば歌いやすいし、なんだか良い感じ(キー変更は妥協ではなくアレンジ)
  • 曲調も歌いやすい
  • スマホなどで録音して客観的に聞いてもやっぱり良い感じ
  • 人に聞いてもらった評判も良い

自分に合った選曲、その基本はチャレンジ精神と根気良くいろいろ試すことです。

素敵な曲を選べますように!

キャズミア
この記事を書いた人

キャズミア

■ 歌手・音楽家として
7歳でピアノ、16歳でボーカルを始め、アルバイトをしながらライブ活動などをして27歳、やっとの事で大手レコード会社からデビュー。それからはプロのシンガー、ライター、プロデューサーとして、2021年までアルバム制作とツアーを多数行う。 現在は一線を退き、後進の育成に力を注いでいる。

■ボーカル講師として
ボーカル講師歴は30年に渡り現役。 大阪・東京のスクールや専門学校で共鳴を最大限に使った発声法、バンド・アンサンブル等をレクチャー。ジュニアからシニア、アマチュアからプロフェッショナルまで多くの指導経験があり、レッスン生達が有名プロダクションで活躍している。